窓から飛び立った私の姿を、広場から発見したアキトと隊士達。
「リン…!?」
「あーあ。リンちゃん出て行っちゃったー。」
「サクてめえ縁起でもねえこと言うな。」
「隊長の不手際でしょ。」
アキトは押し寄せる後悔に眉を顰める。
私がいない…つまり私のご褒美がないと分かり、隊士達も稽古する気力が折れてしまい。
今はみんなで集まっているだけの状態。
「アキトさん。」
「あ、ハナちゃん!」
「サクくんちょっと退いてて。」
「あ、はい。」
ハナちゃんはアキトを責める。
「私言いましたよね。リンちゃん傷付けないでって。」
「…リンは?」
「反省はしてそうですね?」
「そりゃあ…なあ。」
もう姿も見えなくなった空を見上げるアキト。
その姿は私がここに来る前に、約束の時を迎える前と同じ光景で。
ハナちゃんは察した。
「リンちゃん、お夕飯までには戻るそうです。」
「…そうか。」
「今は幸いトキさんいませんから。」
「あ?」
ハナちゃんは沸々と再度怒りの色を露わにする。
「またここで待つだけですか!?リンちゃんが城に来る前もそうして待ってましたよね!?」
「は…?」
「早く追いかけて謝って来てください!リンちゃんを一人にしないでくださいっ!!!」
「……。」
アキトは、また空を見上げて。
大きく息を吐く。
「…俺が行ったらまた逃げられるかもなあ。」
「隊長またヘタレ出てます。」
「…サク、俺隊長な?」
「俺も付き添いましょうか?」
私に逃げられるのを恐れて、本当はサクに一緒に来てほしいと思っているアキトだけれども。
サクもそれに気付いているけれども。
「…いや、馬だけ頼む。」
こうしてサクが馬を準備して。
アキトは私を追いかけて城を出る。
「ねえ、サクくん。」
「ハナちゃんどうしたの?」
「アキトさんって、リンちゃんのことすごく大事にしてるんだね。」
「…そうだね。相手がリンちゃんだから慎重になるのは分かるけど、ヘタレすぎてちょっと笑えるよね。」
サクとハナちゃんは和やかにそんな会話を交わしつつ、アキトを見送った。

