そんな熱いユイ姫さんとは打って変わり。


涼しい顔で城へ来ていたシオンは、今日はエゼルタ王からのお呼び出しだったらしい。





「…失礼します。」


「シオン、シキの様子はどうだ。」


「弟子達と隠れて鷹狩りに出掛けたり、女連れ込んだり、自由にしてますよ。」


「あの馬鹿は…全く。」



謹慎中にも関わらず、自由奔放な総司令さん。




「また勝手に兵を起こしてなんて馬鹿なことはしないはずなので、心配要りません。」


「シキはあの姫に執着を見せる。そこがどうも…不安でな。」


「…陛下もですか?」


「…シキが話したのか?」



お互いの腹の内を、探ろうとする両者。


私に執着するのはエゼルタ王も同じではないのかと、シオンは仕掛けた。




「いえ、特には。」


「…あの姫と、接点があるらしいな?」


「……。」


「これはシキに聞いた。お前がようやく惚れる女が出来たのかと思ったが、それはトキの方だと言っていた。」



前者が正しいのだが、ここは黙るシオン。




「お前から見て、どう思う。」


「…アレンデールの姫を、ですか?」


「ああ。」



私をどう思うか。


これまたシオンには難しい問い掛けで、珍しく即答出来ずに考える。




「…殺すには惜しいか?」


「……。」


「お前にはどう見えた。」


「…分かりません。」



考えて、考えた結果。


答えは分からない。それは本心でもあった。



本心を垣間見せながらも、もっと心の奥底から溢れる想いがシオンから紡がれる。







「ただ、俺には殺せません。」


「…そうか。」



小さく返事をしたエゼルタ王は、貫禄ある顔で優しく笑い目を細める。




「それはお前の意志か、トキのためか。」


「……。」


「ユイが荒れそうな話だな。」


「…ですね。」