溢れる怒りを、ユイ姫は今日はシオンではない別の将軍を相手にして晴らすことにしたらしい。
部屋に呼び付けられた将軍さんも、もう手慣れたもので。
ここでの己の役割を熟知している。
「お慰めいたします。」
「ええ。」
慰めるためらしい行為。
私には到底理解の出来ない大人の世界。
服は乱れ、ベッドも乱れ、ユイ姫さんも淫らに荒れ狂う。
毎回シオンが呼ばれるわけではないのは、ユイ姫さんの気分らしい。何せシオンは無礼なので。
自分の機嫌が悪い時にあの無礼は余計に腹が立つことを分かっている。
「…はぁ。」
「姫様、いかがされました。」
「最近思い通りに行かないのよ。それもこれもあの落魄れ姫のせいなのかしら。」
「落魄れ…ああ。アレンデールの例の魔女ですか。」
事を終えた二人は、何故かベッドの上でそんな話を始める。
「私のトキにまで手を出すなんて、愚かな女。」
「トキ様に?それは許し難いことですね。我が国唯一の姫様の婚約者に言い寄るとは。」
「…本当に。どれ程の女なのか興味も出て来たわ。」
「興味など持つ必要はないでしょう。姫様より美しい女性など、存在するはずがありません。」
蝶よ花よと育てられたユイ姫さん。
そんな褒め言葉に口角を上げ、艶やかな笑みを溢す。
「その通りよ。トキは渡さないし、逆に会うことがあればその女から全てを奪ってやるわ。」
全く身に覚えのない対抗心は勝手に燃え上がる。
トキさん。
とんでもないことをしてしまったなと、私がこれを知っていれば絶対言っていたと思います。

