エゼルタ遠征までの流れる時間。
私と言えば、本を読んで、おーちゃんと稽古して、本を読んで、また読んで。
そしてたまーに、笑顔の練習。
「お嬢、ニコニコして可愛え。」
「練習中なのー。」
「そんなんせんでも充分可愛えで。」
「笑ってるとユイ姫さんに勝てるんだってー。」
私がカウンターでニコニコ笑顔の練習をしていると、前にいるカイが可愛い可愛いと褒める。
あ、勝てるって話ではなかったか。
「間違えた。仲良くなれるかもしれないんだってー。」
「逆やんか。どんな間違いや。」
「勝ち負けよりも、仲良くなってみたらってママに言われたんだけど。出来るかなー。」
「…変わらんな。」
変わらない?
笑顔だろうが真顔だろうが意味はないってことか?
「私だって仲良くなれるなんて思ってないよ。」
「は?あー…どうやろな。あの姫さんは癖あるしなー。」
「負けなければ何でもいいし。」
「…俺はお嬢のおかんに賛成やな。会う前から決めつけんと、お嬢ならあの姫さんの根性叩き直せるんちゃう?」
何だって私がそんなことをしないといけないんだ。
「笑顔の練習中に笑顔消えたでー。」
「あ。」
「まだまだやな。オウスケもこっち立ってみ。可愛えで。」
「カイ馬鹿にしてるでしょ。」

