シオンがあまりに怒っているので、私はカイと話したいことがあるが。
予定を変更して先に外出しようかと考える。
「…っ!」
そんな私の考えを先読みしたシオンが、私の腕を掴んだ。
「もう良いですか?」
「はい?」
「さっきやってたの、俺にもしてくれません?」
「さっき?」
さっき…とは。
思い当たることはあるが、怖すぎて答え合わせなんてしたくない。
「ヤハネの第一将。」
「…無理。イヴは良いけどシオンは嫌。」
キスの話なんでしょう?
イヴは絶対に私のことを好きにならない絶対的根拠があってやったんだ。シオンは…違う。
「お、お嬢…白狼も落ち着いて…な?」
「私は落ち着いてるけど。」
「喧嘩は外で頼むで?」
「シオンに私が斬れるわけないじゃん。」
カイは何を言ってるんだ。
そうは思うが、シオンのこの滲み出る冷たい殺気に当てられたら仕方ないのか。
そこでおーちゃんが今日初めて動く。
「お嬢、俺今回は白狼に着くわ。」
「え?」
「俺もさっきのは腹立った。」
まさかの二対一。
ビッグネームのお二人相手。どっちか一人でも私に勝ち目はない。
「…それで?私にどうしろって言うの?」
「逆ギレか。てか、ハルもっと怒ってくれたらええのに。」
「同意見。」
私がイヴにキスしたことを、ハルは事故だと飲み込んだ。
しかしもっと怒ればいいと二人が言う。
「…ハルがあんなことで私に怒るわけない。」
「あんなことって、事故やと思ってるにしたって俺はもっと怒るべきやと思ったけどな。」
「事故でも故意でも、私は何も痛まないし傷付かない。ハルはそれ以外のことで私を怒ったりしない。」
逆に私が何を傷付けても壊しても、余裕で許してくれる。
さっきのはハル自身が不快に思っただけ。だから怒りはイヴに向いただけ。私に対してじゃない。
良くも悪くも、ハルは私を制限しない。
「もっと慎むべきでは?」
「そうやそうや。気合うな白狼。」
「で、俺にもしてください。」
「じゃあ俺も。」
二人が好き勝手そう言うけども。
生憎、とてもそんな気分ではない。

