私はそんなものが幸せだなんて思わない。


だから恋愛なんてしたくない。特定の誰かを好きになって、その人と添い遂げられたらそれは幸せなことだろう。



でも、私の頭にその選択肢はない。




「定義とかそんなん置いといて、もし俺が今死の際やとして。その時お嬢が側におったら俺は幸せ者やなーと思う。」


「…その気持ちは…分からんでもない、かも。」


「俺ええこと言うた?」


「…だね。」



そう言うことにして、この話はやめよう。暗い。



おーちゃんには悪いが。


確かにその気持ちは分かるんだ。でも、分かるからこそ私はやっぱり恋愛には向かない。





「んで、さっきの話やけど。」


「あー兵士さんとのお話の件ね。不撓不屈の誓いが気に入らないんだよね。」


「気に入らん。ヒマリのことは考えんでいい。俺も別に重ねてるわけとちゃうし。やから、例えそんな事態になっても最後まで諦めたらあかん。」


「…さっきも言ったけど、私が戦場で死ぬなんてあり得ないんだよ。そんなとこで死ねるなら苦労しない。」



戦場で私の命は時に何よりも優先される。


私が居なければ勝てないと、アレンデールの兵達の気概を感じていたから。私の盾になってしまう。さらにるうもいる。




「ハルが守ってくれるからやろ?」


「ご名答ー。ハルだけじゃないけどね。そんな人達の立派な信念を私が折れないじゃん。」


「じゃあ、ほんまに変な誓い立てたらあかんで。」


「それくらいおーちゃんが大事だってことだから、あんまり卑屈に捉えないでよー。」



真っ直ぐな正義が、そんな私を許せるはずもなく。


おーちゃんはパルテノンに着くまで永遠に私に簡単に死ぬなと言い続けていた。



…もう耳タコです。