「何でまたトキはそんなことしたの。」
「知らん。弟軍師は女嫌いやのに、ベタベタ触られて不快やったんちゃう。」
「なら良し。トキが嫌がることしたユイ姫さんが悪い。」
私への怒りでトキから照準が逸れたなら良かったです。
身に覚えのない文句言われても構いません。
「でも落魄れ姫やで?酷ない?」
落魄れ…ですか。
まあ、ね。今は地位も立場も捨ててしまったからね。落魄れても見えるんだろうね。
そっかー。落魄れ姫かー。
「…絶対何もかもへし折る。」
「…。(それでどこが温厚やねん。)」
私の名前での文句は問題ないけどね。
姫って言ってるからね。アレンデールの威信にも関わるからね。
それに、あなただけには言われたくないんですわ。
「腹立ったー。行ってくる。」
「…気、付けて。」
私の怒りに思わず触れてしまったおーちゃんは、恐れながら有無も言えず送り出すことになった。
そこはラッキーな誤算でした。
そして、カイとの連携に帳尻を合わせ、目的地へ少し派手目に馳せ参じ。
付近にいるであろう総司令さんの間者にわざと見つかって。
とは言っても、戦前なので向こうにも戦闘の意思はないのは分かっている。バレバレだが、見つからないように隠れているのがその証拠だ。
その辺の人に声を掛けたり、適当に暇を潰してまた飛んで去る。
こんなことを最近ずっと続けて来た。
…これは私の撒いた餌だ。
この撒き餌に、上手に食い付いてくださいよ。エゼルタの総司令さん。

