「ところで……」と俺は女に向けて言った。 「これから、どこへ行くんです?」 「えー? 聞こえないよ」 「どこへ行くんです!?」 「あ? ああ、依頼主のとこだよ」 「依頼主……」俺は女が聞こえないくらいの声で反芻した。そして、次は女に聞こえるように、 「依頼主ってなんですか!?」 「えー? 依頼主は、依頼主さ。誰があんたなんかロハで助けるか」 「ロハ?」 「タダってことだよ」 「あー、只(ただ)で、ロハ……」