獅子の皮を被った子猫の逃走劇




 「どう?どこか痛む?」
 「ううん!大丈夫だよ」
 「あの男の子……折田くん?良い子だね」
 「え、なんで?」


 私の今の状況をカルテに記しながら、にこにこ顔で言う叔母にびっくりする。

 叔母と折田先輩の間に何があったんだろ。


 「折田くんがぼろぼろの獅音を抱えて連れてきた時びっくりして、思わず頬っぺ叩いちゃったのよ〜。折田くんのせいで獅音が怪我したと思っちゃって」
 「え!?」


 それを聞いてびっくりしたけど、叔母ならやりかねないなーなんて妙に納得してしまった。

 きっと、叔母は私が折田先輩のせいでヤンキーの抗争に巻き込まれたって考えたんだろうな。


 その先が気になって、それでそれで?と促すと叔母は陽気に話し始めた。


 「それでね〜、私が勘違いして叩いちゃったのに文句の一つも言わないのよ?それで彼言ったの、"娘さんを危険に晒してしまってすんません"って」


 娘さん……。娘さん!?

 そこで気づいた。

 私、普通に女の姿晒してた。


 叔母はまだ意気揚々と、折田くんのここが良いと語り続けている。

 話が長くなりそうだったから、仕事中でしょって追い返しといた。