獅子の皮を被った子猫の逃走劇




 あれもこれも、全部希良ちゃんがやっていた?

 信じたくないけどそう考えると、全て辻褄が合う。

 私の行動パターンを知っている希良ちゃんだからこそ、靴箱や机に色々入れられた。

 私の家を教えたのも希良ちゃんと折田先輩だけだし。


 ――そっか……。

 点と点が、どんどん繋がって線になっていく。

 もう一度、希良ちゃんを窺い見るとその目には涙が。


 今ならあの時の意味もわかる。

 幹部会議で虎月の不審な動きの報告に浮かない顔をしていたこと、私と折田先輩の怪我を心配してくれていたこと。


 私たち――龍ヶ崎のみんなと希良ちゃんの間に築かれた絆は偽物じゃなかったのだ。

 優しい希良ちゃんはどっちも裏切れなかったんだね。

 そう気づいたら幾分かは心が楽になった。


 「……何その顔。ああ、もういいや、お前らやれ」
 「なっ、や、やめ……!」


 私が気に食わない彼は、一瞬顔を顰めたと思ったら、次の瞬間には、良いこと思いついたとでも言うように周りに声をかけた。

 周りにいた男たちが数人まとめて近づいて来た。