獅子の皮を被った子猫の逃走劇




 季節は梅雨。

 窓の外では大雨がザーザーと降り、時々、窓にあたってパラパラと音を立てている。


 「ううー」


 せっかくの三連休だというのに、生憎の雨模様で何もすることがなく私は自室で項垂れていた。

 偏頭痛で頭が少しズキズキと痛む。

 この際、部屋の掃除でもしようかな。

 あー、でもなー。

 そんな感じでさっきから、ベッドの上をうにょうにょしていた。


 その時、ふいにスマホから通知が鳴った。


 「なんだろ」


 スマホを手に取って確認すると、叔母からの連絡で。

 大事な忘れ物をしたから届けて欲しいとの旨が送られてきていた。


 もう一度、窓の外を見る。

 叔母の務める病院は二駅となりから徒歩15分程の場所。

 普段なら近いと思う距離でも、この雨の中ではそうはいかない。


 「行きたくないけど、行くっきゃないかー」


 大きく伸びをして、家を出る支度を進めた。


 この時の私は知らなかった。
 ……あんなのを見てしまうなんて。