獅子の皮を被った子猫の逃走劇



 おもむろに私の手を取った先輩。

 次の瞬間、チロっと指先を舐められた。

 ……うん!?


 「え、せせ先輩!?何してるんですかあ!」
 「血が出てんだろ」
 「だからと言って、なんで舐めっ……!」
 「嫌、だったか?」


 えなにその顔。

 なんでそんなに悲しそうな顔するんですか!


 「嫌ってわけじゃないですけど……」
 「けどなんだ」
 「急にされて、ドキドキしました」
 「ふっ、そうか。なら良かった」


 笑った……?

 今日はやけに表情筋が大活躍する先輩。

 というか、良かったって何ですか。


 顔面国宝の折田先輩に怒涛の連続攻撃を繰り出されて、キャパオーバー寸前の私は黙り込んでしまう。

 何も言えなくて、隣を伺いみると、

 猫ちゃんを愛でてた穏やか顔で私を見てた。

 もう一度言うね、私を見てた。


 「っ!」
 「顔、真っ赤」
 「う、言わないでください……」


 辺りはもう甘々な空気一色。

 昼休みの終了を告げるチャイムでハッとして脱兎のように掛けた。

 この間、テレビでギャップ男子のここがやばい!みたいな特集組まれてたのを見たけど、それを身をもって感じた。

 ……ギャップ恐るまじ。