隣の席は、天邪鬼くん⁉

「もしかして、何も知らずに入ってきた?」

「はい、実は……」

「そっか、じゃあちょっとびっくりしたよね」

 そう言って、私を気遣うようにニコッと笑ってくれる。

「ここは、この辺ではかなり有名なヤンキー高校なんだよ。ケンカ好きの不良たちの間では登竜門として知られている」

「登竜門……?」

「そ。常にみんな、トップの座を狙っているんだ。猛者が集まるこの高校でトップになるのはかなり難しい。……それ故にトップは、絶大な人気と権利を持つ」

 一瞬、赤星くんの空気がすっと冷えた気がした。

 だけどそれは気のせいだったのか、次の瞬間にはもう元の穏やかな空気に戻っていた。

「中にはグループを作ってる奴らもいるけど、まあ構成員は雑魚ばかりだね。それでも人数で押し勝って、地位を上げようとする。それくらいみんな必死なんだ」

「そんなこと、学校側は認めているんですか……?」

「もちろん。30年以上前からずっとこのスタイルなんだよ。学校側が定めるルールは『授業を受けること』、『学校を壊したら弁償』、『校外でケンカをしてはならない』の三つだけ」

「でもそんな、『授業を受けること』なんて言って、不良たちがおとなしく聞くわけ――」

 いや、でも一時間目はちゃんと受けてたな。

 どうして……?