隣の席は、天邪鬼くん⁉

 旧体育館のさびた重い扉を一気に開いて、おれは中に駆け込んだ。

「黒崎っ!」

 ……誰も、いない?

 はっはっと短く息をする。

「うわ、ほんとにきたじゃん。うける~!」

 イラッとさせる口調で話す声が聞こえて、おれは声の主を探す。

 ――いた。

 舞台袖から、1人の男が歩いてくる。

 宏が言ってた。

 確かあいつは、恒田ってやつだ。

「……黒崎は、どこだ」

「黒崎? あ、あの転校生のこと? ……そんな子、ここにはいないよ?」

「……何だと?」

「よく考えてよ、あんな早い時間にいつも来てる?」

 おれの背後で、ガラガラと扉を閉める音がする。

「うちらが用があるのはきみだよ、白瀬くん。きみ、うちの葛田のケンカに割って入ったうえに、ぶっ飛ばしてくれたんだってね?」

「……ちっ、やっぱそーかよ」

 おれは舌打ちしながらも、黒崎が無事であることに少し安堵する、

「ちょうど、ナンバー2のきみと手合わせしてみたいと思っていたところなんだ。舞台に上がってきな」

「……5分だ。あと5分したら、黒崎が来る。それまでなら、付き合ってやるよ」