隣の席は、天邪鬼くん⁉

 遡ること、2ヶ月。

「就職先、決まった」

 晩ご飯の準備をする私に、キッチンをのぞいたお父さんが短く言った。

「ほんと!? よかったね!」

 我が家の稼ぎ手であったお母さんが死んじゃって、もう半年近くがたった。

 代わりにお父さんが働かなきゃいけなくなったんだけど、昔の経歴のせいで就活は難航してたんだ。

 実はお父さん、昔はけっこう荒れてたらしいんだよね。
 
 なんでも、ヤンキー高校のトップだったとか。

「ちなみに、どんな仕事?」

「……私立高校の教師。知り合いが、産休で休む人の代わりにと」

 教師……って、失礼だけどお父さん、教えられるほど勉強ってできるんだっけ……?

「……千歳が後々役に立つからって勉強を教えてくれたのが、こんなところで役立つとはな」

「そっか、お母さんが……」

 私はちょっとしんみりしちゃう。

 お母さんはお父さんとは別の高校。

 不良に絡まれているところをお父さんに助けてもらったのが出会いなんだって。

「県外なんだけど、転校することになっても......いいよな?」

 私はこくんとうなずいた。

 だって……不登校の私には、別れて寂しいような友達なんていないし。

「そうか。新しい高校は、俺が勤めるところでもいいか?」

「なんでもいいよ」

 新しい高校に行けば、きっとあのうわさだってみんな知らないはずだから。

 次の高校こそは、フツーの女子として、平穏な生活を送るんだ……!