一粒のラムネ

「…死んじゃったか」

私の彼女。

やっぱり弱くて死んじゃった。まあ私の読み通りでもあるんだけど。

流石にちょっと寂しいな、と勝手に思う。

今私の手の中にあるのは、一粒のラムネ。

今から、これを食べて彼女の後を追うつもりだ。

彼女がいじめられていたのは、まあ当然だけど知っていた。

彼女に手を差し伸べたかったけど、あからさまに気づかれたくなさそうな顔をしていた。

〝迷惑かけたくないから。〟きっと、彼女ならそう言っていただろう。

優しさが故に、あいつらのターゲットにされちゃった。

可哀想、ごめんね、守れなくて。

でも、天国に行けば二人で幸せに生きられるでしょう?

誰にも邪魔されることはなく、二人だけの世界で生きられる―。

まあ、死んでいるんだけど。

こんな汚い世界より、よっぽどマシで最高だと思わない?

もういない彼女に問いかける。勿論、返事は返ってこなかった。

「…今行くからね」

彼女の死因は、このラムネだ。

私が〝気をつけてね〟と念押ししたラムネを、食べたのだ。

人間の好奇心って怖いなぁ、なんて思ったり。

「さよなら、汚い世界」

私が彼女と巡り会えたのは、この汚い世界のおかげ。

そこだけは感謝して、最期の言葉はこれにしようと思ったのだ。

手の中にある一粒のラムネ。私はそれを飲み込んだ。



あ、死ぬ。


数時間後に死亡が確認