目を瞑ってごらん

何か見えるかい?

暗い暗いその奥に

何か見えないかい?

何色ともつかないきらきらした光の中で

それは目を瞑るたびに近づいてくる

初めは光の中にある黒い点だと思っていたそれは

次第に面積を拡大し

暗闇を暗闇で包み込む

安心した君はそのまま眠りに就くだろう

だが眠りに落ちんとする刹那

暗闇であるはずの暗闇が

誰かの赤白い眼球に変わる

誰かが瞼の裏側からこちらを覗いているのだ

目を瞑るたびに目が合う眼球

目を開けると消え去る眼球

君は一瞬の瞬きさえ怖くなる

それは冬将軍の証

君は雪女に選ばれた冬の使徒なのだ

さぁ怖れず目を瞑り

目の前にある眼球に宣言せよ

我は冬将軍なり

今こそ天に舞いて

魑魅魍魎を成敗せんと駆け吹き荒れようぞ

蛹の様に硬くなった体から脊椎が抜かれる感覚

ばりばりと裂ける背中

真っ白な冬将軍が弾みをつけ一気に空に舞い上がる

凍える様な暗闇の中

君と同じように選ばれた冬将軍達が上空1万メートルに集結する

水平線の彼方・・・

四足で天翔ける馬鬼を従え真っ赤な悪鬼が

この地を征服せんと一団を組み疾風迅雷の如く迫り来る

吹き荒れる風は我々の軌跡

降り落ちる白雪は我々の血飛沫

侵食を許すは死と同等なり

同等なり