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帰り際のことだった。
学校の門を出るまで雑談をして、門を出たとき。
「ミャー」
聞き覚えのある鳴き声だった。
「え、なにこの猫、可愛い!」
蒼空は目を輝かせて、黒猫の近くにしゃがんだ。
それは、私がこの前見た黒猫だった。黒く染まった毛に、うるうるした瞳。どうして...?
数日経っても同じところにいるならまだ分かるけど、今日は学校まできている。これって、普通なのかな。
私がそんなことを考えているうちに、すっかり黒猫は蒼空に懐いたようだった。蒼空に撫でてもらって、気持ちよさそうにしている。
蒼空の、黒くてサラサラな髪の毛が目に映った。その瞬間、あることが結びついた。
一番最初に黒猫を見たとき、オーラやら既視感やらを感じた。それは、蒼空のことだったんだ。
黒くて綺麗な毛と、優しく甘い目。その特徴は、蒼空によく似ていた。
蒼空の隣にしゃがみ込む。
「この猫ほんと可愛い、美雲も触る?」
「うん、いや、この猫前も見たんだよね。学校行く途中に」
黒猫にそっと手を添える。リラックスしているようだったから、私はゆっくりと撫でてみた。
「え、そうなの?いいなぁ」
蒼空が羨ましそうにする。黒猫はゴロゴロ、と喉を鳴らした。



