絶望、恐怖、不安、緊張。マイナスな感情だけが押し寄せてくる。現実味が全くなかった。
どんな病気かなんて聞いている余裕もない。聞きたくない。知りたくない。
視界が暗くなって、私はしゃがみ込んだ。顔をうずめる。
「...美雲!」
蒼空の方が辛いはずなのに、どうして私が苦しんでいるのだろうか。
大好きな人を喪ってしまうのが、言葉にできないほど恐ろしかった。
「ねぇ、私は、大丈夫だから」
蒼空が私の手を握った。温かくて、ふっと息ができるのを感じた。
大丈夫なわけないのに、本当に大丈夫だと思えるのはなぜだろうか。
「私も、最初は怖かったよ。辛かった。苦しかった。言葉には収まりきらないぐらい」
そりゃそうだ。そうならない方がおかしい。私ですら、こんなに苦しいのに。
「でもね、やっぱり最期までこのままじゃダメだって思った。どうせなら、三ヶ月の間でやれることをやろうって」
ねぇ、どうして蒼空はそんなに前向きに考えられるの?私、嫌だよ。大切な人が亡くなるって分かってて、一緒に素直に楽しく生きられる自信がない。
「最初は思うようにいかなかった。周りには変わらず合わせてるし、自分らしくいれないままだった」
耳元で、淡い声が流れていく。



