黒い毛に、上目遣いでこちらを見つめてくる、うるうるしていて輝いた瞳。
可愛い...。ちょっとぐらいなら、触ってみてもいいかな。
でも、私がそっと手を伸ばしたところで黒猫は逃げてしまった。少し寂しい気持ちにはなったけど、猫にも警戒心はあるのだからしょうがない。
それにしても、さっきの黒猫は、よく見かけるような黒猫じゃないというか、オーラかなにか分からないけど、他とは違うような雰囲気を感じた。
まぁ、いいか。どうせ気のせいだ。
それにしても、猫は悩みなんてなんにもなさそうでいいな。
猫に限らず、犬も、うさぎも、猿も。食べて寝るだけの生活で、ほんと楽そう。
もし生まれ変わるなら、もうこんな人間にはなりたくないな。他の動物になって、ただゴロゴロしてるだけの人生がいい。
いや、よく考えてみたら、自分もゴロゴロしてるだけの人生か。
じゃあ、私は何を望んでいるんだろう?
幸せ?楽しさ?満足感?
私は、問いかけても出るはずのない答えを探し求めていた。
そんなくだらない内容のことを淡々と考えているうちに、学校の門まで着いた。
今日は、いつもに増して色々な考え事をしていた気がする。



