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学校へ行く間も、つい目線が空の方を向く。前までは下を向いて、コンクリートを見つめるだけだった。でも今は違う。
緑に覆われた田舎。夏は彩度が高いから、四季の中でも特別な感じがする。
毎日、同じ景色なんかじゃなかった。全てが同じ空が存在しないように、景色も少しずつ変わっていく。
春には桜が咲き、夏は色鮮やかで、秋は彩度を落としていき、冬は白く寒さが身に染みる。
失ったものを、取り戻していくようだった。私の視野は、狭すぎたみたいだから。
風景を眺めていると、あっという間に学校にも着いた。
ガラガラ、とドアを開ける。一番後ろの、窓側の席に腰かける。 ここからだと、日は眩しいけど、空がよく見えた。
深みのかかった青。これを’’蒼い’’ともいうらしい。蒼い空が、遥か遠くまで続いているように感じる。
蒼空の方を向いてみると、いつものように友達と話していた。でも、秘密を聞いてからは、どこか無理をしているように見えた。
蒼空は、あのままでいいのかな。みんなに合わせ続けて、嘘の笑顔を振り撒いて。
仮面を被ったままこの先も過ごすなんて、もったいないと思った。蒼空本人も、このままだと苦しくなるだけだろう。それに、私としても蒼空が辛そうな姿を見るのは嫌だ。
でも、いきなり本性を出すこともできないし、みんなと距離を置くこともできなさそうだ。
ちょっとずつでもいいから、いつか仮面を完全に外せる日がきたらいいな。
私も、少しずつ歩んでいっているから。一緒に支え合って、進んでいきたい。そう思った。



