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家に帰り、階段を上って部屋にカバンを放り投げた。
階段を降りると、お母さんが「チョコいる?」と聞いてきたから、とりあえず貰っといた。
「浮かない顔してるけど、美雲、なんかあった?」
図星を突かれた。私の些細な変化にも気づくことに、少し驚いた。
「いや、ないよ。ちょっと疲れただけ」
心配をかけたくもないし、これは私が一人で解決するものだ。
「そう?たまには、頼ってもいいからね」
「...うん」
私はチョコをいくつか手に持って、部屋へ向かった。
ベッドの上に座って、一粒のチョコを口に入れる。
はぁ。思わずため息が洩れて、気が滅入る。
あの関係は、もう取り戻せないのかな。嫌いだなんて、一番言われたくなかったのに。考えるだけで、胸が苦しくなる。
そもそも、なんで嫌いになったの?中学生のときはあんなに仲良くしてくれたのに。蒼空が考えてることなんて、全然分かんないよ。
嫌なところがあったなら、言ってくれれば直したのに。でも、これは蒼空の優しさなのかな。頭では理解できているはずだけど、心では感情が邪魔して理解できていない。
私は素直になんでも伝えてほしかった。なんでも言い合える関係を築きたかった。そう思ってしまうのは、私の高望みなのかな。それとも、友達ってそういうものなの?経験したことがないから、友情関係の’’普通’’というものも分からない。
やり直すために行動したのに、やり直すどころか、もっと崩れてしまった。
楽しかったあの頃に、戻りたかった。もしも私が今日話しかけていなかったら、こんな思いをせずに済んだのかな。私が起こした行動が、全部無駄に見えた。いいことなんてなにもない。
最初から、話し合おうなんて考えてなければよかった。
足を腕で抱えて、顔をうずめた。
私は、どうするのが正解だったの...?
現実は甘くないというより、むしろ苦いくらいだ。



