「嘘なんでしょ?」
もう、無理だ。今更、後に引けない。思ってきたことが、頭の中にうじゃうじゃと湧き出てくる。だったら、せめて本当の理由だけでも聞きたかった。
「え?」
「言う余裕もないって、誘ったときとかに集中したいって言えるじゃん。本当は、他の理由があるんじゃないの?」
とぼけないで、早く教えてほしい。でも、答えを求めつつも、その先にあるものが怖かった。
「嘘じゃないよ、ごめん」
数秒間待って、蒼空の口から出た言葉はこれ。いかにも嘘っぽい言い方だ。
嘘だと決まってるわけでもないのは分かってる。でも、これは違うと思う。無性に腹が立ってくる。やっとの思いで行動できたのに、答えが分からないまま。
「...本当のことを教えてよ」
あぁ、会話って、色々と難しすぎるよ。人間は、なんでこんなにも複雑なのだろうか。
蒼空の表情から笑みが少しだけ消えていき、俯いていく。
「ほんとだって...!」
ねぇ、どうして?違うでしょ。感情を飲み込めなくて、途方に暮れる。
「なんで?嘘だよ。そんなわかりやすい嘘なんて、つかないでよ...!」
私は眉をひそめて、蒼空に向かって言った。なんで言わないの?なんで隠すの?なんで、なんで__。
「っ、うるさい...!別に、知る必要なくない?私だって、言いたくないことの一つや二つだってあるよ!」
息を飲んだ。感情を押さえ込んだような声が、耳の中によく通る。



