「えっと...」
本当は、今すぐにでも逃げ出しちゃいたいぐらい。
「中学生のときの話なんだけど...。今思えば、話すほど重要なことでもなかったかもしれないんだけど...」
私が勝手に思っていただけで、これほどのことでもなかったのかな、って。
「...うん!」
蒼空がぎこちない微笑みを浮かべていたと感じたのは、気のせいかな。
「なんで...」
言葉が詰まりそうになる。喉が押し潰されて、声が出ない感じ。
「なんで、避けてたというか、その、離れていったの...?」
あぁ、言ってしまった。聞きたくなかった。この後の返事を。ただでさえ気温が高いのに、緊張で余計に暑くなる。
蒼空は、「えっと...」と言って、黙ったまま。
怖かった。話すのも、返事を聞くのも、全部。息が震えそうになる。
「や、その、受験に集中したくてさ...!」
本当なの?疑いたくはないけど、この答えは全然腑に落ちなかった。本当だったら、返事をするのにこんなに悩む必要もないと思うし。
「じゃあ...なんで。集中したいなら、最初から言ってくれればよかったのに...」
考えていたことが、静けさが際立つ屋上に出ていった。罪悪感と怒りと寂しさが混ざって、複雑な感情になる。
「うん...そうだよね、ごめん!言う余裕もなくてさ」
違う...。そうだとしたら、少しも会話をする余裕もなかったはず。私がほしいのは、そんな言葉じゃないよ。ごめんの三文字で済ませてほしくない。
本当のことを言ってほしかった。



