「やば、蒼空天才!!言われてなかったら気付かなかった!」
そんな、クラスメイトの声が響いた。
…蒼空?あ、そういうことか。さっき蒼空がこっちを見てきたと思ったのは、虹の雲があったからだったのか。
「え、虹の雲って、幸せの予兆ってなんかで聞いたことある!!」
みんなでわちゃわちゃしてそんなことを言いながらも、目線はスマホ一点。SNSにでも投稿しているのだろうか。
でも、蒼空の方を見てみると、蒼空は友達と群れたりせず、スマホも取り出さずに、じっと虹の雲を見つめていた。その姿は、なにか言葉に表せない雰囲気を取り繕っていた。
あ...。もしかして、今なら。
みんな虹の雲に夢中だから、少しなら蒼空と話せるかもしれない。
体が自然に蒼空の方へと動く。そして、ついに蒼空の目の前まできた。
「あ、あの...さ」
自分でも情けないぐらい、小さい声。
「ん、あ、どうしたの?」
蒼空から、ほんの少し困惑したような返事が返ってきた。しどろもどろになって、目を合わせられない。
「その、ちょっと、放課後話したいことがあってさ。いい、かな...?」
「あ、うん!大丈夫、いけるよ!」
途切れ途切れにはなってしまったけど、なんとか誘うことに成功した。
「良かった、ありがとう...じゃあ」
そう言って、そそくさと自分の席に戻った。
はぁー、もう、なにこれ、こんなんでまともに会話できなくない?絶対いきなりなんだって思われたって...。
コミュニケーション能力なさすぎでしょ、私。また、一人反省会が始まる。
いや、ダメダメ。被害妄想しないって決めたんだから。極力考えないようにしよう。
私は気を紛らわすために、本を読み始めた。
六時間目が始まるチャイムと同時に、集まっていた人たちは急いで席に戻っていく。
今日の放課後に、蒼空と話す。あと何時間もあるというのに、もう心臓がドクドクしている。


