…あぁ、ダメダメ。こんなこと考えちゃ。
私は首を横に振って、気持ちを切り替えようとした。
実際は現実と向き合っていないだけ。でも、私の唯一の逃げ道はこれしかなかったから。
「ちょっと、なにぼーっとしてんの?遅刻するよ」
ちょっと手が止まっていただけなのに、お母さんはいちいち小言を言ってくる。
「うるさ...」
お母さんに聞こえないように、ボソッと小さく呟く。
憂鬱で食欲も出なくて、私は朝食を残して学校の準備をしようとした。
「はぁ、美雲ったら、また残すの?」
そうすると、どれだけ聞いても聞き慣れない、お母さんの甲高い声が耳に響いた。本当にうるさい。
「別にいいじゃん。朝は食欲ないんだって」
思ったことをそのまま返すと、お母さんは頭を抱えてため息をついた。
あぁ、ストレスが溜まる。「ため息をつくと自分に不幸をもたらす」とよく言うけど、周りの人に不幸をもたらすことだってある。今がまさにそれだ。お母さんがため息をついているのを聞いて、こっちが不快になる。
私はお母さんのことを無視して、気持ちが落ち着かないまま準備をし、玄関のドアを開けた。



