「蒼空...ちゃんは何味が好きなの?」
また少し間を置いてしまい、不自然な名前の呼び方になった。
「私はバニラが好き!ていうか、やっぱり名前で呼ぶの慣れないね」
蒼空にふふ、と笑いながらそう言われた。
その笑い方にはどこか安心感があって、心地よかった。
「うん、やっぱ慣れない」
蒼空と話しているうちに、何故かふっと口元が緩んだ。
気付いたら口角がほんの少し上がっていて、自分でも驚いた。普段はこんなことありえないから。
「あ、美雲ちゃんが笑ってるところ珍しくない?なんか新鮮ー!嬉しい!!」
蒼空は今にも飛び跳ねそうな様子で喜んでいた。
蒼空から言われた「嬉しい」という言葉が耳から離れない。
「そうかな...」
少し微笑んだだけでこんなに褒められるなんて、人生で初めてだと思う。
「うん!美雲ちゃんの笑顔、すっごい可愛い!!」
「ありがとう...」
少し恥ずかしさもあったけど、それよりも嬉しさが勝って、また少し笑みがこぼれた。
蒼空は、なんて心が綺麗な人なんだろう。
あぁ、私も蒼空みたいになれたらな。



