数分後。担任の先生が教室に入ってきて、「みんな、よく聞いてくれ」と言っていた。
「今日は一つ大事な話がある」
教卓の前に立ち、そう告げられた。もしかして、いじめのこと?いや、もしかしてじゃない。絶対そうだ。
「朝井のいじめについて、少し話させてもらう」
私の予想は的中した。こんなの、余計なお世話なのに。昨日のことで終わりになったなら、これ以上深く関わりたくなかった。
「まず、この学校で、しかもこのクラスで、いじめが起きたのは先生としても本当にショックだと思っている」
本当なの?そんな問いかけが、先生の言葉を聞いて即座に思い浮かんできた。
先生は、私のいじめに本当に気付いていなかったの?関わったらめんどくさそうだから、関わりたくなかったから、わざと気付かないふりをしていたんじゃないの?
そんなの、一番の傍観者だ。
「人を傷つけるということは、絶対にあってはならないこと、してはいけないことだ」
だったら、最初から早く止めてよ。そんなの、ただの綺麗事にしか聞こえない。表面上だけの言葉なんて要らないよ。
「傷つけられた人の気持ちは、お前らが思っている以上に辛いんだぞ」
先生に、傷つけられた私の気持ちなんて分かるわけないでしょ。今一番私を傷つけているのは、先生だよ。
「いいか?俺はこのクラスの絆をもっと深めたいんだ。だからみんなで仲良くして、支え合え。そうすれば、今からでもきっと良いクラスになる」
配慮がなさすぎて、もはや呆れそうになる。なにが絆を深めたいなの?支え合うなんてもってのほか。
「だから、もうこんないじめはやめてくれ。以上だ」
もう、かける言葉も見つからない。
どうせなら、ちゃんと真剣に向き合ってくれる担任が良かった。担任ガチャ大ハズレとは、このことか。
私は失望しつつも、一時間目のチャイムが鳴り、いじめの話は終わりを告げた。



