「大丈夫だよ。もしなにかあったら、私がついてるから」
そんな言葉に、私は救われた。一瞬、天使なんじゃないかと思ったぐらいだ。困っているときに手を差し伸べてくれる、優しい性格の持ち主。
「あ、ありがとう...」
まともに感謝を伝えるなんて、いつぶりだろうか。
蒼空は私に微笑みかけてくれた。太陽のように明るく、眩しい笑顔で。
いつの間にか手の震えは止まっていて、ドアの向こうへ踏み出す恐怖も、蒼空がついていると思うと自然と消えていくような気がした。
私は覚悟を決めて、ドアをガラガラと開ける。
いつも浴びていたみんなからの視線は、昨日と比べたら明らかに少なくなっていた。里奈達を除いては。
予想していた通り里奈達は、ゴミを見るような目で私を見つめながら、ボソボソと陰口を言っていた。
ああいう人なんて、先生がちょっと注意したってそう簡単に変わるわけがない。
でも、里奈達以外の人達はいつも通り友達と話したりしているみたいで、少し気が軽くなった。いつも通り、を装ってるだけかもしれないけど。まぁ、いきなりこのクラスの雰囲気を一気に変えることは出来ないし。なにより、私を嫌っている里奈達がいるから。
私は自分の席へ向かった。机に黒い跡は少し残っていたけど、里奈達が書いたであろう無神経な言葉は消されていた。
その後も里奈達からなにかをされることはなかったから、一件落着だと思う。少しだけ、冷たい目線は気になったけど。



