机をただじっと見つめているうちに、いじめてくる五人の中でも一番リーダー的な存在である、矢坂里奈が近づいてくる。怖い、恐い。だれか、助けて__。視線の向きを変えられないまま、そう心の中で叫んだ。
そのとき、教室のドアが開く音がした。
「三年二組の白瀬蒼空で...って、なにしてるの...?」
少し目線をあげて声がした方に顔を向けると、状況を理解したような理解していないような、そんな表情をしている人がいた。
白瀬蒼空。なにもかもが完璧で、みんなから好かれていて、クラスの中心にいるような人気者。
そんな蒼空は私の机を見て、すぐに駆け寄ってきた。
「なにこれ...」
蒼空は私の机を見て、か弱い声でそう呟いていた。いつもの明るい声とは、比べ物にならないぐらい。
私はなにも言えないままで、震えも止まりそうになかった。
蒼空が里奈の方に目を向けたとき、蒼空の表情が、プチンと糸が切れたように変わった。
「なにしてんの?」
いつもは優しく笑顔でいるけど、今は違った。普段よりずっと、低くて静かな声。
教室に、不穏な空気が流れる。
いきなりの光景に、私は目を丸くせずにはいられなかった。



