「全部ね、お母さんのストレスからなのよ」
お母さんは、寂しそうな表情で視線を落とした。
私が黙っていると、お母さんは続けて言った。
「なんかね、ずっとイライラしてばっかりになっちゃって。毎日、美雲に怒ったときは後悔してた。なんでこんなに当たっちゃうんだろうって。だからね、全部美雲のせいじゃないし、美雲が反抗したくなる気持ちも、心では痛いほど分かってたのよ」
そうだったの...?お母さんも、怒りたくて怒ってるわけじゃなかったの?お母さんも、陰で抱えていた悩みがあったんだ。
ずっと、知らないままだった。
勝手に決めつけて、勝手にムカついて。
でも、今のことを聞いて、お母さんに対する気持ちが百八十度ひっくり返った。
「そう...なんだ...」
もっと前から、ちゃんとこうして話すべきだったな。言い表さないと、なにも分からないから。
「本当に、ごめんね。お母さん、やっぱダメダメよねぇ...」
なんで。
「そんなこと言わないでよ、しょうがないじゃん。お母さんにとってはダメかもしれないけど、私にとっては良いお母さんだから」
お母さんは、若干目を見開いた。


