「このチョコ、美味しい」
取るに足らなさそうだけど、とりあえず思ったことをそのまま言ってみた。
「そう?お母さん、全然美雲の好きな食べ物とか分かんないから適当にしちゃったけど」
そっか。今まで長い間寡黙でいたから、好きな物も知らないのか。
「いや、結構、甘いのとか好き」
毎日一緒にいるはずなのに、お互いのことをお互い知らない。私とお母さんは、近いようで遠いような関係だった。
また、組み立てていかないといけない。
「ねぇ、お母さん」
「どうしたの?」
今朝は言えなかったけど、今なら言える気がした。
「...今まで、色々ごめん」
真剣すぎて、逆に重いかな。もっと軽い感じで言えば良かった...。
お母さんは、首を左右に揺らした。
「こっちのセリフよ。美雲は謝る必要なんかないの」
「え?」
謝る必要がない?いや、そんなわけない。
だって、私は今までお母さんにたくさん面倒をかけてきたから。むしろ、もっと謝りたいぐらいなのに。


