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力が出なかった。なにをするにも気力が湧かなくて、スマホもいじらずただぼーっと天井を見つめているだけ。食欲も湧かないし、起きることすらやりたくない。
現実味がない。現実を受け入れられない。受け入れたくない。
ピーーーという高い音が耳に鳴り響く。思い出したくないのに、耳にこの音がこびりついて離れない。私は目を強く瞑って、耳を塞いだ。
ねぇ、蒼空。戻ってきてよ...。空の上にいると言っていたけど、今は空を見上げる気分にもなれなかった。
学校も一週間ほど休んだ。土砂降りのように憂鬱な日は、今日が初めてだった。
時間の感覚もない。あるのは、世界にただ独り、取り残されてしまったような感覚だけだった。
そのとき、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。
「美雲...大丈夫?」
その先に聞こえた音はお母さんの声。
大丈夫じゃないに決まってるじゃん。もう、全部鬱陶しい。一人にさせてよ。
「放っておいてよ...」
力強いのか弱いのか分からない、曖昧な声で答えた。



