私は今日も、そらを見上げる。



はぁ、はぁ、と大きく息を吸いながら、病院に着いた。急いで蒼空の病室に行く。エレベーターに乗りながら、水をごくごくと飲んだ。

「蒼空...!」

ドアを開けると、ぐったりとした蒼空と、だれかがいた。

蒼空のお母さんとお父さんらしい。

「あら...もうお母さんたちは十分話したから、蒼空と最期に話してあげて」

「...はい!」

少し躊躇いそうになったけど、蒼空のお母様とお父様の恩を、私がしっかり受け取らないと。

私は呼吸を整えて、蒼空の傍に座った。

「ねぇ、蒼空...何回も言うけど、私、蒼空がいてくれて、本当に幸せだった」

お揃いのブレスレットを付けた手。でも、蒼空の手は驚くほどに冷たかった。

「美雲」

美雲、と呼んでくれるその声は、疲れきったような小さい声。

「私、どれぐらい幸せだったと思う...?」

え...?と掠れた声が出た。蒼空と目を合わせる。蒼空はほんのりと微笑んでから、言葉を発した。

「正解は...死んでもいいぐらい」

死んでもいいぐらい。私は、そのぐらい蒼空を幸せにできたの?

「もう...やり残したことはないよ」

ねぇ、でも嫌だよ。死んでもいいなんて言わないで。

「でも、私、蒼空が亡くなっちゃうなんて、耐えられる気がしないよ...」

ねぇ、蒼空。最期までわがままでごめんね。そして、最期まで私のわがままに付き合ってくれてありがとう。

「ううん。私は....空の上で見守ってるから...」

呼吸が浅いのを見て、蒼空はもう亡くなってしまうんだ、と暗闇に包まれるような感覚になった。

「空を見上げれば...私がいるから...」

「...分かった、私、蒼空の分まで幸せになるから」

蒼空が亡くなってしまう現実は、どうしても変えられないから。

もう、視界は涙でボロボロだった。

蒼空の分まで、ちゃんと生きなきゃ。

「私...もう...」

本当に、最期の時がきてしまったみたい。

「ねぇ、待って、蒼空。お願い、いかないで」

無理だと分かっているのに、こんなにも引き止めてしまうのはどうしてだろうか。

「美雲、だいすき」

私は首を横に振る。息が震える。嫌だ。蒼空__。

「最期に...」

冷たい手をぎゅっと握ると、微かに手を握り返してくれたのが伝わった。


「幸せになってね」