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余命まであと六日。
今日はキンセンカの花を買う。
鼻がツーンとなるお花屋さんに入り、昨日と同じ店員さんに「キンセンカの花ってありますか?」と聞いた。
「ありますよ、ここです」
「ありがとうございます」と昨日に続いてお礼を言った。
優しいオレンジ色をしたキンセンカの花を手に取った。
病院へ行き、蒼空の病室に入った。
「これ、キンセンカ」
シオンの花を入れてある花瓶に、キンセンカも入れた。
蒼空は「綺麗...ありがとう」と微笑む。
「ねぇ、花って、意味とか...あったりする?」
あぁ、バレちゃったかな。
「さぁね?」
バレてはいるだろうけど、一応誤魔化しておいた。
「じゃあ、明日は、勿忘草がいいな」
ふふ、と表情を緩める蒼空。しょうがないなぁ。
最期まで蒼空が幸せでいられるなら、どんなわがままでも叶えてあげる。
この日、美空とは会えなかった。どうしてだろうと考えても、分からないだけ。
当たり前のようにいつも美空を迎え入れていたけど、美空がくるのは当たり前じゃなかった。



