病院に着き、エレベーターに乗る。蒼空の病室へ足を運んだ。
コンコン、とドアをノックし、ドアを開けた。
その先にはベッドに横たわった蒼空。
「あ、美雲...」
力がなさそうに蒼空は笑う。その姿を見るのが辛かった。
「やっほ、蒼空」
でも、そんな気持ちを堪えて私も負けないぐらい笑う。
「これ、シオンっていう花」
私はお見舞い用の椅子に腰かける。
「わぁ...綺麗」
「でしょ」
椅子から立ち上がり、花瓶に水を入れる。そしてシオンの花を入れた。
ベッドの近くに花瓶を置く。
「ねぇ、蒼空」
蒼空が顔をこちらに向ける。
「私、蒼空に出逢えてよかったよ」
蒼空と出逢えて、世界がまるで違って見えるようになったから。出逢えてよかったって、飽きるぐらい何度でも言うよ。
「私も、美雲と出逢えて、よかった。嬉しかった」
蒼空の手を握った。手首には、お揃いのブレスレット。蒼空の手は温かくて、その温もりに触れればいつも安心できた。
「ねぇ、美雲。私がいなくなっても、ちゃんと、幸せになってね」
蒼空はそう言うけど、私は蒼空がいなくなったら幸せでいられるか不安だよ。蒼空がいたから幸せでいられたのに、いなくなっちゃったら、もう...。
「大丈夫だから。美雲は、幸せになれるから」
蒼空が両手で私の手を包み込んだ。
優しくしないで。これ以上私に温かくしないで。
じゃないと、冷めてしまったときに凍えちゃうよ。
病院から帰るときも、美空はいた。
でも、いつものようにずっと傍にはいてくれなかった。少しだけ近くでじっとしていて、「ミャー」と鳴いて行ってしまった。その瞳はなぜか、どこか寂しそうだった。



