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たまには遠出もせず、二人きりで海に行くことも多々あった。
海で朝焼けも見たし、夜の海も見た。今日は夜の海。ただ海を眺めて、ただ波の声を聞く時間が好きだった。海で蒼空としょうもない話をするのが好きだった。
「ねぇ、海月って、海に月って書くじゃん?」
私は頷きながらも、なんでいきなりそんな話題を出してきたのだろうかと不思議に思っていた。
「それってね、海に浮かぶ姿が月のように見えるからなんだって。綺麗だよね」
「綺麗、そんな意味あったんだ」
初めて知ったし、そもそも海月の名前の由来なんて知りたいとも思っていなかった。
海に浮かぶ月。言われみれば、海月のように見えなくもない。
蒼空は、私に沢山のことを教えてくれた。その度に私は、蒼空と出逢えてよかったなと思えたんだ。
「ねぇ、蒼空が死ぬなんて、私嫌だよ」
急に、そう思った。いや、正確に言えば、前から思っていたことが、今急に溢れ出してきた。
「私の死を惜しんでくれるなんて、嬉しいなぁ」
惜しまないはずがない。大好きな人が、大事な人が亡くなってしまうなんて、どれほど辛いことか。
「でもね、美雲。美雲は私がいなくなっても、絶対幸せになれるから」
蒼空が私の手を取る。その温もりが、手の施しようがないぐらいに幸せで。


