『ゴツすぎる』と婚約破棄されて追放されたけど、夢だった北の大地で楽しくやってます!〜故郷は剣聖の私なしにどうやって災厄魔物から国を守るんだろう?まあ、もう関係ないからいっか!〜


「それなら五大英雄にのみ開放する封印の地を永久凍国土(ブリザード)の中に作るのはどうでしょうか?」
「五大英雄にのみ開放する封印の地……?」
「ええ。世界が危機に瀕したら、五大英雄はその地を訪れればいい……という場所です。アリア嬢の話を聞く限り、封印核に宿る“封印核を刻んだかつての五大英雄たちの意思”は記憶も“記録”としてら引き継ぐのでしょう? でしたら一度、各地の封印核に宿るかつての五大英雄の意思に『五大英雄の力を開放する術について学びたければ永久凍国土(ブリザード)を目指すように』と導くよう頼むのです。そして永久凍国土(ブリザード)に一つ一つ試練を作り、その試練を超えると力を一つ一つ開放していくことができる……(てい)で情報とともに力の使い方を学べる施設を造るのです。アリア嬢にはその施設を“封印”し、封印核に意志を遺して後世の五大英雄が力を欲した時に導く存在となればよいのではないでしょうか」

 ぽかん、と口を開けてしまった。
 ほんの少し考えただけでこれほど簡単に解決法を思いついてしまえるなんて、やはりセッカ先生はすごい。
 すごすぎる……!

「もちろん簡単ではありませんよ」
「ほへ!?」
永久凍国土(ブリザード)の調査が先ですし、永久凍国土(ブリザード)の中が無理なら永久凍国土(ブリザード)に近いどこか別の……たとえば樹氷の森のどこかに場所を確保しなければなりません。それに、そこへ誘導を促すために各地の封印核のかつての英雄たちの意思へ、事情の説明とお願いをしなければなりません。それと、他の今代の五大英雄たちへも相談をした方がいいと思います。自力で紋章の使い方を開発してゆこうという方もいるかもしれませんが、やろうとしていることは教会以上の情報統制ですから。それに、その試練についても初代聖女様に紋章の力を聞き、具体的にどのようにするのがよいのかを考えねばなりません」
「あ……そ、そうか……」

 やるべきことはたくさんある。
 言い出したのは私だけれど、セッカ先生に全部考えてもらっているな。
 だが、それが一番よい気がする。
 五大英雄の力もまた、最低限封印されており力を開放するには永久凍国土(ブリザード)にある五大英雄の力を祀る建物を訪れねばならない。
 そういう(てい)にしておけば、私のように『ゴツいから』というしょうもない理由で婚約破棄を受ける必要もないし、望めば各々が厄災魔物と戦う力を得ることができる。
 うん、それがいい。

「ちなみに耐性もどうにかできたりするのだろうか?」
「対象とするのが『五大英雄の紋章』の力です。耐性もなくなるかと思いますよ。ですから今代の五大英雄たちとも話し合いは必須かと」
「なるほど。確かにそれはしっかりと話し合って、同意を得る必要があるな」
「はい。情報を一つに集めて、五大英雄ならば手軽に手に入るものであれば、五大英雄たちも役目について選択肢が増えると思います。役目を果たすか、果たさないか。教会に促されるまま故郷を離れて他国の国守として生きるか、そうせずに自分なりに生きるか。……もちろん、五大英雄の紋章を持って生まれた以上、封印核への聖魔力供給はしていただかねば封印が保てなくなるでしょう。だからこそ、教会や国々は五大英雄に対して真摯に『依頼』をしなければならなくなる。それによって五大英雄たちの自我が強くなり、別のトラブルも生まれるでしょう」

 そうだな、と頷く。
 教会や国々による五大英雄への対応は大きく変化する。
 へこへこと頭を下げて、機嫌取りに躍起になるかもしれない。
 私の両親のように傲慢で我儘になる、そんなやつも現れるだろう。
 だからこそ、五大英雄を洗脳に近い環境で育ててきた。
 でもそのやり方では五大英雄を畏怖の目で見て五大英雄の心は無視されたまま。
 初代聖女様ではないけれど、それでは心が上手く育たない。
 私のように……自分の心がわからないままになってしまう。
 私は本当に恋をしているのだろうか?
 この人のことを愛している?
 自信がない。
 これが普通の人と同じ感覚、気持ちなのか。
 だが、初代聖女様に言わせると愛や恋は聖魔力を増幅させ続ける。
 そんなバカな、と思うが実際今こうしている間にも供給したあとだというのに聖魔力がもうたっぷたっぷ。
 今まで感じたこともない変なソワソワ感というか、緊張感というか……。

「なんだかワシが聞いていていい感じの話でもなさそうだな。空のことも気になるし、今日のところは帰らしてもらうぜ。でもまあ、ワシに手伝えることがあったら気軽になんでも言ってくれ」
「ありがとうございます、アマルさん」
「嬢ちゃんも、いつでも薬草師として仕事をしたくなったら声をかけろ。教えられることならなんでも教えてやるからな」
「あ! ああ! こ、今度薬草について改めて教えてもらいたい!」
「おう、いつでも来い」

 数日とはいえ採集した薬草は問題なかったか、とか聞いておきたかった。
 あとで聞きに行こうと思っていたが……まあ、優先すべきは五大英雄の話か。
 私では思いつかないことだが、セッカ先生はスラスラと利点や問題点を挙げていく。
 私が頭で整理している間に紙を持ってきて、さらさらペンでそれらを書き出してくれた。

「五大英雄同士でどうか話し合ってみてくださいね」
「なにからなにまで申し訳ない。ありがとう」
「いえいえ。……これでもまだお礼としては十分とはいえません」
「え?」

 そう言ってセッカ先生が空を見上げる。
 本当に嬉しそうな、優しい眼差し。

「生きている間にまた、この青い空を見られるとは思っていたなかったのです。本当にありがとうございます」