『ゴツすぎる』と婚約破棄されて追放されたけど、夢だった北の大地で楽しくやってます!〜故郷は剣聖の私なしにどうやって災厄魔物から国を守るんだろう?まあ、もう関係ないからいっか!〜


 道のない森の中を北へ北へ進む。
 入り口の近くよりもさらに気温が下がっている。
 少しずつ坂になり、それを登り続けると日本の柱が建っていた。
 間違いない、これが封印紋章の核……!

「五代目賢者、レアナス・ヴォルティスキーより授かりし知識よ、我に紋章を紐解く力を貸したまえ」

 己の胸の剣聖の紋章に聖魔力を溜め込み、両手に流し、その手を右の柱に押しつけた。
 柱がゆっくりと聖魔力を吸い込む。
 聖魔力が吸収されていく……!?

『ああ、あなたが聖魔力を注いでくれたのですね』
(あなたは――)

 これは、レアナスの時と同じ!
 現れたのは銀髪の美女。
 女、ということは聖女か?

『私はシュリアス・ミラ。あなたたちの時代でいうところの“初代”聖女です』
(初代聖女……! お会いできるとは、ご、光栄です)
『あなたはアリトリスの……剣聖の紋章を受け継いだ者ですね』
(アリアリット・プレディターといいます)
『初めまして。聖魔力を注いでくれて、ありがとう』
(もしや聖魔力が足りずに封印が弱まっていたのか?)
『その通りです。この土地の封印は定期的に聖魔力を注がなければならないのです。ですが、ここ百年ほどその供給がありませんでした。教会の者には封印核には五大英雄の聖魔力を注がねばならないと、後世に伝えるように約束をしていたのですが……なぜかその約束が守られていなくて』
(え……!?)

 封印核には定期的に魔力を注がねばならない……!?
 そんな話、初めて聞いたぞ!?
 私たち五大英雄は“封印核を守る者”。
 だが、封印核がどこにあるのかもわからないし、知らされない。
 ただ、現れた厄災魔物を討伐する存在。
 厄災魔物が厄災魔王の封印を解くために生み出され、封印核を破壊するために厄災を振り撒きながら襲ってくる。
 五大英雄はそれらから国や人々、封印核を守る存在。
 だが、それだけではなかった……?
 五大英雄が生み出す聖魔力で、封印核の維持をしなければならなかったというのか!?
 そんな大事なことを、なぜ教会は現代に伝えなかったというのだ!?

(教えてほしい、シュリアス様。永久凍国土(ブリザード)には厄災魔王が封じられているのだろうか?)
『いいえ。この地に封じられているのは異空間に封じられた厄災魔王を封じる封印核を守るための結界の核を封印している核です』

 ややこしい。
 えっと、つまり? 封印核は各地に五つ。
 その封印核の柱を守る結界の封印核が、ここにある――ということらしい。
 念入りに封印核が守られているということか。

『しかし、あまりにもこの地の封印が弱まりすぎました。完全に消えたわけではありませんが、ここまで弱まってしまうと効果はほとんど期待ができません。急ぎ各国の封印核に聖魔力を注いでくださいませ! でなくば封印が解かれ、魔王が復活してしまいます! そうなれば、勇者なき現代では勝ち目がありません。あの魔王の目的は人間の間引き。いくらでも、人々を虐げて虐殺の限りを尽くすでしょう!』
(っ……それほどまでに……!)

 だが、本当になぜ教会はそんな大切なことを現代に伝えなかった?
 長い時の中で少しずつ削られていったということか?
 だが、もっとも大切な封印のことが秘匿され続けるだろうか?

(だが、急務であることは了解した。他の五大英雄と紋章を通して連絡し、早急に封印核に聖魔力を注いでもらおうと思う。他になにかあるだろうか?)
『もっとも各地の封印核を守るのに適しているのは、ここ、永久凍国土(ブリザード)の封印核です。この封印核を回復させれば、各地の封印核の守護も復活するでしょう。しかし……この好機を魔王が見逃すとは思えません。もっとも弱っている封印核を狙われるはずです』
(もっとも弱っている封印核はどこなのだろう?)
『クラッツォ王国南部にある主柱核です』

 ――ああ……嫌な予感が当たってしまった。
 厄災魔物が出現しなくなったことは、平和になったということではない。
 ランクの高い、より強い厄災魔物の誕生を予期するもの。
 その可能性。
 レアナスの知識から私がアイストロフィに来て初めて遭遇したあの厄災魔物が、厄災魔物としての最低ランクの強さだとわかった。
 つまり、あれよりも遥かに巨大で強力な魔物が、クラッツォ王国に近く、現れる――。
 でも……クラッツォ王国には聖女がいるのだ。

(まあ、もう関係ないからいっか。通告はしよう。うん。彼女も五大英雄の一人なのだから、自分でなんとかできるだろう。私は永久凍国土(ブリザード)の封印核に聖魔力を注ぐ仕事をすればいいか)
『問題はなさそうですか?』
(ないと思う。聖女の力は結界を張り、侵入を阻み守ること――の、はずですよね?)
『そうですね。クラッツォ王国にも聖女がいるのであれば、聖杖で対応はできるかと』

 聖杖。私にとっての聖剣のようなものか。
 紋章から作り出せばいいのだろう。
 やり方を教えておけば、なんとかなりそうだな。
 じゃあやっぱり大丈夫か!

(では、今日から毎日通って聖魔力を注ぐとしよう! それで大丈夫だろうか?)
『はい。よろしくお願いします♡』