刹那に触れる兎


そして、その日壮太郎さんは帰宅すると、まず「莉子さん、体調はどうですか?」と心配してくれた。

「あまり良くはないんだけど、、、壮太郎さんに話したいことがあるの。座って?」

わたしがそう言うと、壮太郎さんは不思議そうな表情を浮かべ、わたしと並んでソファーに腰を下ろした。

「どうしたんですか?何かありましたか?」

不安気にそう訊く壮太郎さんに、わたしは今日病院で貰ったエコー写真を差し出した。

それを見た壮太郎さんは、「えっ、、、?!」と驚き、エコー写真を手に取ると、それを見つめていた。

「今日、レディースクリニックに行ってきたの。そしたら、、、妊娠してた。」 

わたしがそう伝えると、壮太郎さんはエコー写真を見つめたあと、わたしを抱きしめ「莉子さん、ありがとうございます。」と言った。

「ほら、ここに赤ちゃんがいるのよ?触って?」

わたしがそう言うと、壮太郎さんはわたしのお腹を見つめ、そっと手で触れた。

「まだ9週目で小さいけど、壮太郎さんとわたしの赤ちゃんがいるの。」

壮太郎さんはわたしのお腹に触れながら、涙を流した。

壮太郎さんの涙を見たのは、この時が初めてだった。

それから、わたしの悪阻は本格的になっていき、壮太郎さんは「莉子さんは身体を休めていてください!」と家事を全てやってくれた。

寝る時は、わたしを後ろから抱きしめ、壮太郎さんはわたしのお腹に手を添え、守るように眠っていた。

わたしは幸せ者だ。
そう思いながら過ごす毎日。

わたしは壮太郎さんに支えてもらいながら、2人で赤ちゃんが生まれてきてくれる日を待ちわび、穏やかに愛されながら暮らしていったのだった。



―END―