刹那に触れる兎


わたしはその日、ニオイに耐えながら夕飯を作り、帰宅した壮太郎さんにはまだ伝えず、「生理がきた。」と嘘をついた。

体調が悪いことを隠し切れず、ソファーに横になっていると、壮太郎さんが「大丈夫ですか?今日はいつもよりツラそうですね。」と心配してくれる。

「今日は早めに寝ましょう。」

そう言って、お姫様抱っこでわたしをベッドに運んでくれる壮太郎さん。

「まだ洗ってない食器があるの、、、。」
「大丈夫です。僕が洗っておきますから。」
「でも、壮太郎さんと一緒に寝たい。」
「じゃあ、莉子さんが眠るまでそばに居ますよ。」

そして、わたしは壮太郎さんに包まれ、安心感からすぐに眠りに落ちた。


次の日、わたしは体調がすぐれず、布団から出ることが出来なかった。

壮太郎さんにお弁当も作れず、玄関までお見送りにも行けずで「壮太郎さん、ごめんなさい。」と謝ると、壮太郎さんは「そんなこと気にしないでください。莉子さんのことが一番大切なんですから。それでは、行ってきます。」と言うと、わたしにキスをして出勤して行った。

わたしは午前中のうちにレディースクリニックに電話をした。

すると、たまたま午後にキャンセルが出た為、受診することが出来ることになり、わたしは何とか出掛ける支度を済ませると、午後からレディースクリニックへ行った。

初めて行くレディースクリニック。

ドキドキしたが、診察を終えると、女医さんから「おめでとうございます。今妊娠9週目ですよ。」と伝えられた。

差し出されたエコー写真には、豆粒のような丸い姿が写っていた。

わたしのお腹の中に赤ちゃんがいる、、、

まだ実感は湧かなかったが、何だか心が温かくなり嬉しかった。