刹那に触れる兎


「父と母は、お相手の女性を気に入ってしまって、結婚前提のお付き合いを勧めてきました。でも、僕は父と母に今お付き合いしている人がいることを伝え、この話はなかった事にして欲しいと言いました。そしたら、やはり付き合っているのはどんな人なのかを訊かれて、、、僕は莉子さんのそのままを伝えました。それで父と母との話し合いが長引いて、こんな時間になってしまいました、、、。」

壮太郎さんの言葉にわたしは「そりゃ、そうよね。大事な息子の恋人がこんな穢れた女だなんて、、、反対するのは当然よ。」と言い、煙草を咥え、深く吸い込み、煙を肺に落とした。

「それで僕は、莉子さんと別れさせられるくらいなら、両親との縁を切ることを選びました。」

わたしは「えっ、、、?」と驚き、首だけで振り向き、壮太郎さんを見た。

壮太郎さんは「僕は、何があっても莉子さんを守り抜く、、、そう言ったじゃないですか。」と言い、切なげに微笑んで見せた。

「そんなぁ、、、ご両親と縁を切ってまで、、、」
「いいんです。元々、両親に縛られて生きてきて、生き苦しさもありましたし、、、僕は両親より莉子さんの方が大事なので。」

そう言って微笑む壮太郎さん。

わたしは煙草を灰皿に落とすと、涙を流しながら壮太郎さんに抱きついた。

「泣かないでください、莉子さん。」
「だって、、、わたしのせいで、、、」
「莉子さんのせいじゃありません。僕が選んだ道ですし、何の後悔もしていません。」

壮太郎さんはわたしを抱きしめながら、優しく頭を撫でた。

「僕には、、、莉子さんしか居ないんです。」
「わたしも、、、壮太郎さんだけ、、、。」

そして、壮太郎さんはわたしの頬をつたう涙を親指で拭うと、わたしに顔を寄せ、そっと唇にキスをした。