刹那に触れる兎


壮太郎さんは、わたしを裏切るような人じゃない。
そう思っていたのに、、、

わたし、また裏切られたの?

壮太郎さんの優しさ、包容力に騙されて、信じたわたしが馬鹿だった。

わたしは久しぶりに泣いた気がする。

多分、元彼が自死した時以来かな。

わたしは、いつもなら17時から出勤するが、気を紛らわす為に今日は15時から出勤した。

そして、次から次へと来る常連客、新規のお客さんを相手し続け、壮太郎さんのことを考えないようにした。

また仮面を被ればいい。
ただ、それだけ。

そうしてわたしは22時に仕事をあがり、タクシーで壮太郎さんの家に帰宅した。

帰宅するとシャワーを浴び、シルクのガウンを着て、ベランダに出た。

そして、ちょっと久しぶりにベランダで煙草をふかす。

すると、なぜだか涙が溢れてきて、頬をつたった。

短い間だったけど、壮太郎さんとここで一緒に過ごして、壮太郎さんの優しさに触れ、また恋をしてもいいかな、と思えた。

壮太郎さんに心惹かれる自分がいた。

でも、、、やっぱり、それは間違いだったんだ。

わたしは、やっぱり穢れたままだ。

すると、玄関のドアが開き、閉まる音が聞こえた。

壮太郎さんが帰宅してきたのだろうと思ったが、わたしは出迎えもせず、ベランダで煙草をふかし続けた。