刹那に触れる兎


「この女は風俗嬢だぞ?お客様を満足させるのが仕事だろ!」
「でも、お店のルールをご存知の上で通っていたんじゃないんですか?」
「ルールなんて、あって無いようなもんだ!他の風俗嬢は、やらせてくれる女だって居る!」
「じゃあ、そちらの方にお相手してもらえば良かったんじゃないですか。」

諏訪さんの正論しか返ってこない事に、更に怒りを募らせる野田さん。

野田さんは「お前、レミさんのこと随分庇うんだな。レミさんの何なんだよ。」と諏訪さんを睨みつけた。

「彼女は、僕の恋人です。」

諏訪さんがそう答えると、野田さんは「恋人?」と言ったあと、大袈裟という程に笑い始めた。

「風俗嬢の恋人?こんな汚い風俗嬢を恋人にしたがる男なんているんだなぁ!」

野田さんは馬鹿にしたように笑い、「何でわざわざ風俗嬢を彼女にしようと思ったんだよ!他にもっとまともな女なんて山程いるだろ!風俗嬢が彼女だなんて恥ずかしくないのか?」と言った。

すると、諏訪さんは一歩前に出ると、野田さんの胸ぐらを掴んだ。

「レミさんに今までお世話になっておきながら、酷い言い草ですね。レミさんは汚くなんてありません。ルール違反をした自分を棚に上げて、人を嘲笑う方が余程恥ずかしい事だと思いますが?」

落ち着いているようで怒りに満ちた低い声でそう言う諏訪さんは、「これ以上レミさんを侮辱するようなら、侮辱罪で訴えますよ?」と言った。

すると、諏訪さんのスーツに光る弁護士バッチに気付いたのか、野田さんは「弁護士?!」とビビリ始めた。

「僕と戦いますか?」

作り笑顔で優しく諭す諏訪さんの言葉に野田さんは後退りすると、「もうこんな店来ねーよ!」と吐き捨て、逃げるように去って行ったのだった。