刹那に触れる兎


「諏訪さんって、変な人。」
「よく言われます。」
「大体の男は、家事は女の仕事だと思ってる。家事をやる男の人やイクメンとか呼ばれる人も増えてきてるみたいだけど、何それって感じ。家事は女の仕事って誰が決めたの?イクメンって何?自分の子を育てるのは当たり前のことで、父親が育児をすれば褒められて、母親は育児をして当然のように言われる。変な世の中。」

わたしはそう愚痴りながら、白ワインを一気に飲み干した。

「そうですね。それが原因で離婚する夫婦は多いです。」
「お客さんでもいるの。子どもが生まれてから、嫁が相手してくれなくなったって愚痴る人。妻は、旦那の性処理係じゃないって言ってやりたい。」

すると、諏訪さんは嬉しそうに笑った。

わたしが「何で笑うの?」と訊くと、諏訪さんは「一瞬、本当の莉子さんを見られた気がして嬉しくて。」と言った。

諏訪さんにそう言われ、ハッとするわたし。

ついつい、素の自分を出しかけてしまった。

「莉子さんって、本当は純粋な人ですよね。仮面を被っていても、ふとした時に出てしまうものですよ?」
「わたしは、、、もう前の自分を捨てたの。」
「どうしてですか?」
「真面目に生きてたって、報われないから。それなら、汚れた生き方をしてもいいかなって。」
「、、、何かあったんですね。莉子さんを変えてしまうような出来事が。」

諏訪さんの言葉に、わたしは導かれるように自分の過去を思い出し、そして諏訪さんに自分の過去を話し始めた。