刹那に触れる兎


諏訪さんは、トマトとモッツァレラのサラダと、白ワインを用意すると、わたしの隣に腰を下ろした。

そして、白ワインが入ったワイングラスを持ち、「お疲れ様です。」と乾杯をする。

今日の白ワインは甘口でさわやかな白葡萄の香りが口の中を広がった。

それから、トマトとモッツァレラのサラダも食べてみたが、トマトは甘く、かかっているドレッシングも美味しい。

諏訪さんはわたしの反応を見ながら、「どうですか?」と訊いた。

「美味しい。」
「良かったです。莉子さん、普段ちゃんと食事を摂ってますか?そんな細い身体で、心配です。」
「基本的には、1日1食しか食べないの。出勤前に何かしら食べてるから大丈夫。」

わたしはそう言うと、白ワインを口に含んだ。

諏訪さんは自分の膝に肘を付き、わたしの顔を覗き込むようにわたしを見ると、「莉子さんが僕の家に居るなんて、まだ夢のようです。」と言った。

「その内それが当たり前になって、わたしに興味なんて無くなるわよ。」
「そんなことは有り得ません。」
「家事もしない、ただ居るだけの女なんて何の価値もないでしょ?」
「家事なんて出来る方がやればいいだけです。」

諏訪さんの言葉にわたしは驚いた。

お堅い弁護士さんは、女が家事をやって当たり前、女は男を支えるのが仕事だと言う人ばかりだと思っていたけど、諏訪さんは違った。

"家事なんて出来る方がやればいい"

わたしには、衝撃的な言葉だったのだ。