人食い寺と新聞部

ということです。
人喰い鬼よりもずっと現実的でしょう?

久保田麻衣子先輩がこつ然と姿を消したとき、寺には誰かがいて久保田先輩を連れて裏手から逃げ出したんじゃないかと考えたんです。

もちろん久保田先輩は暴れたり悲鳴を上げたりするでしょう。
だから抵抗されないように最初から準備していたんじゃないかと。

たとえば手足を拘束する道具とか、眠らせるための薬とか。
相手は誘拐常習犯で、あの寺に訪れる若者を誘拐していた、とか。

どうですか?
当時のことを思い出してもらえますか?
……寺には誰もいなかった。

出入りする物音も聞こえなかった。
はぁ……。

でも、寺へ行ったのは暗くなってからですよね?

真っ暗な中で真っ黒な服を来ていたとしたら、姿は見えないんじゃないですか?
……草木を踏みしめるような音も聞こえてこなかった?

そうですか。
風はどうですか?

風が強いと周囲の木々が揺れて大きな音がしますよね?
それで足音がかき消されたとかはないですか?

……ない、ですか。