私は自分が食べるためにキャンディーの包み紙を剥ぎ始める。
すると、粕谷くんがポツリポツリと話し始めた。


「……アンタで3人目だった」


「3人目?」


「俺のこと女子みたいって言わなかったの」


「……?」


「こんな見た目だから、男の輪にいても女の輪にいても、どこにいても浮いてた。だけど、大我と勇征だけは違った。見た目なんて関係ない。ここじゃ強さが全てだから」


粕谷くんは肌も白いし、女の子と言われても納得できる女性的な顔立ちをしている。
今の口ぶりから、これまでにからかわれて嫌な思いをしたことがたくさんあったのかもしれない。


「ってわけで、アンタで3人目」


「なるほど」


「だからってわけじゃないけど……認めるよ。総代の嫁」


「ほんとに⁉︎」


「それと、これも貰ってやる」


粕谷くんはまさに今私が食べようとしていた棒付きキャンディーを横からパクリと口に含んだ。


「あー!いらないんじゃなかったの⁉︎」


「別に食べないとは言ってないし」


「粕谷くん、素直じゃないなぁ〜本当は私のことそんなに嫌いじゃないでしょ?」


「んなわけ。調子のんな。あと……玲央でいい」


「分かった。じゃあ私のことも、アンタじゃなくて一花って呼んで」


「気が向いたらな」


「はいはい」


どうしようもなく気まぐれで天邪鬼な玲央と私ははいつもこんなやりとりばかり。
でもそれが私たちの日常になっていった。