スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~

 蓮が支えてくれたおかげで壁との衝突も廊下との衝突も防ぐことができた瑠花は震えながらつぶやく。

「まさか……エレベータが、落ちた……?」
「瑠花、急ごう。すぐに煙が上がってくる」
 歩き方がおかしい瑠花を抱え上げながら蓮ははしごに片足を掛け、瑠花をはしご車のバスケットの中に。

「おい、待てって。俺の方が先だろ?」
 警察官三人掛りで押さえられている虎二郎は、逃げ出すことができず大声をあげながら暴れる。

「俺の親父は衆議院議員なんだ。だからさ、金は好きなだけやるから、俺を先に」
 当然だろ、俺の方が大事だからさと話し続ける虎二郎に蓮の顔は変わった。

「おい! なんでその女が先なんだよ! 俺だろ!」
「れ、蓮さん……?」
 一緒に乗らずに、虎二郎のもとに戻ってしまう蓮を引き留めたいのに言葉が出てこない。

「梯子を戻しますので奥に行ってください」
 救助隊員の指示に従い奥へ行こうとした瑠花は、こぶしを握り虎二郎に掴みかかる蓮の姿に目を見開く。

「蓮さん!」
「おい、ダメだ、蓮くん!」
 警察官の男性と瑠花が止める声は気にせず、蓮は虎二郎の胸ぐらを掴んだ。
 蓮のこぶしは虎二郎の頬に当たる寸前でピタリと止まる。

「……っは」
 虎二郎はがくがくと震えながら蓮の拳と顔を交互に見た。

「……お、おまえ、こんなことして、た、ただで、すむと……」
「当たっていないから罪にはならない」
「ぼ、暴力を振るわれたって、い、言ってや……」
「その前にお前のストーカー行為と、他の女の暴行罪と放火について洗いざらい世間に話してやる」
 被害にあった女性たちの現場はいつも翌日に何者かによる放火があった。
 手口はいつも火炎瓶だ。
 幸いゴミ箱や公園の草木が燃えた程度で人には被害がなく、大きな事件にはならずに悪戯だと処理されていたが。

「……っは」
 襟元をパッと離された虎二郎は腰が抜けてへたり込む。
 警察官たちは力が抜けた虎二郎も逃げられないようにしっかりと押さえた。

「もうすぐ煙が上がってきます。ハンカチで口を覆って身体を低くしてください」
 警察官たちに、できるだけ廊下の端に寄りエレベーターから離れるように指示をした蓮は、急いではしごを引き上げ、瑠花を支えるように立った。

 ゆっくりとマンションから離れるはしご車のバスケット。
 横に動いてからだんだん下がっていく。

「蓮さん、助けてくれてありがとう」
 蓮は瑠花に答えることなく、瑠花の首筋に顔をうずめた。