スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~

 蓮が住む部屋から自分たちが住んでいる部屋に戻った凛は大きく息を吐いた。

「馬鹿な社員がいたんだな」
「瑠花ちゃんの名前がバレたなんて」
 凛はスマホに届いた不動産会社からの連絡を再表示した。

 ケーキを食べる前に受信し、思わず「マズい」と言ってしまったあの画面だ。
 瑠花が前に住んでいたマンションの管理人に、もし瑠花を探している人が来たら連絡が欲しいと頼んであったのだ。
 もちろん聞かれた時の回答は「ここには住んでいません」だけれど。

「会社の前で聞き込みしていた情報屋に、誰かが名前を教えたのよね」
「だろうな。名前がわかったから手あたり次第、あの駅周辺を探しているのだろう」
 まぁ情報屋だったら普通にそうするなと正臣は肩をすくめた。

 住所変更はまだしていないし、郵便物は弁護士事務所に転送されるように手続き済み。
 ここがバレる可能性があるのは辞めた会社の人事情報だけだが、そこも弁護士事務所に変更してもらった。
 余程大丈夫だと思うけれど、不安が拭いきれないのはなぜだろうか。

「凛、考え過ぎるな」
 大久間のことになると冷静になれない凛を正臣が諫める。

「正臣が旦那さまでよかったわぁ」
 頼もしい味方だと凛は正臣に微笑んだ。


 凛と正臣が帰ったあと、蓮は大久間のことを教えてくれた。

 凛に聞いていたが、瑠花は何も知らないフリをして蓮の話を聞き続ける。
 時々、言葉に詰まりながら話してくれた蓮は、当時中学生だった自分が何もできなかったことを今でも悔やんでいるように見えた。

「私たち、共通の敵がいたんだね」
「そうだな。意外な共通点だった」
「じゃあ、敵を倒したら結婚しようね」
「それ、フラグじゃないか?」
「えぇっ? フラグ?」
 よく漫画で「敵を倒したら」と出て行った冒険者が帰らぬ人になるパターンだと蓮が苦笑する。

「だから倒す前に結婚しよう」
 笑いながら冗談っぽく言う蓮に、瑠花は思わず「そうだね」と答えてしまった。

「……瑠花?」
「えっ? ……あっ!」
 自分が何を答えたのかようやく気付いた瑠花は真っ赤な顔でワタワタとあわてる。
 両手で顔を抑えると、蓮に簡単に手を外されてしまった。

「結婚……してくれるのか?」
「あ、……えっと、その……」
 先週の木曜日にまだ恋人でいさせてといったくせに、もう翌週の月曜日に結婚すると言っている自分の尻軽さに呆れてしまう。
 でも蓮に側にいてほしいと思ったのは本当だし、不安な時に考えたのは蓮の事ばかりだったし、会えたら安心してしまったし、付き合い始めで気分が盛り上がっているのかもという疑いは否定できないけれど、この先もずっと一緒にいられたらいいなと思ってしまったのだから認めざるを得ない。

「蓮さんと結婚……したい……です」
 嬉しそうに笑ってくれた蓮の笑顔の破壊力は満点。
 こんな笑顔を向けられるなんて幸せすぎるでしょ。
 甘いのに激しいキスは止められそうにない。
 朝も愛し合ったのにまた愛される幸せに、瑠花は心も身体も満たされてしまった。